COFFEE SCIENCE : Vol.1 樽がつくる香りの変化

東北萬国社はこれまで6種類のバレルエイジドコーヒーを作成して参りました。

そしてこの度、同じ山形県というご縁もあって、

山形県鶴岡市の慶應義塾大学先端生命科学研究所に

バレルエイジドコーヒーのデータを採取していただきました。

 

研究結果の論文は未公開となっておりますが、

概要だけこのブログにてお伝えいたします。

 

【論文名】

ウイスキー樽熟成によるコーヒー豆の香気成分の変化と焙煎への影響

 

萬國珈琲が手掛けるバレルエイジドコーヒーについて、

少しでも知っていただければ幸いです!

 

 

目次

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①研究の目的と条件

②結果の概要

③全体のまとめと感想

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①研究の目的、材料と方法

 

【目的】

コーヒーの風味は品種のブレンド、焙煎技術、生豆の加工によって変化します。

樽の中で生豆を熟成させるバレルエイジングは風味を高める手段の1つですが、その成分の変化についてはこれまで明らかにされていませんでした。

ですので、その香気成分を3種類のコーヒー品種で比較しながら分析しようというのが今回の試みです。

弊社としても、バリスタの感覚と経験を持ってこれまでのシリーズは作っていたため、非常に関心のあることでした。

 

【材料と方法】

〈使用品種〉

・ゲイシャ(パナマ)

・ブルボン(コロンビア)

・イエローブルボン(ブラジル)

この3種類を選出した理由は、ゲイシャは付加価値の高い素材、ブルボンはウォッシュドコーヒー、イエローブルボンはナチュラルコーヒーの代表としてです。

価値と精選方法によっての違いを探します。

 品種 原産国 精選方法 栽培標高
ゲイシャ パナマ フリーウォッシュド 1600~1800m
ブルボン コロンビア フリーウォッシュド 1690~1880m
イエローブルボン ブラジル ナチュラル 1100~1200m



〈熟成工程〉

3種類の生豆を樽に入れて熟成させ、7日ごとにサンプリングをします。

そして、29日後に一部を焙煎します。

 

〈焙煎工程〉

・126~209℃で376秒間(約6分15秒)焙煎します。

 

〈香気成分の抽出工程〉

・各サンプルから1gを採取し、25℃1時間香り成分を吸着させます。

 

もっと細かい条件等はあるかと思いますが、大まかな概要は上位の通りです。

香りによる評価を平等にするために、様々な条件をそろえていきます👀

 

研究結果の概要

〈樽から転移した香気成分の特徴〉

・多くの化合物はフルーティーな香りを示した。

・これらの化合物は樽熟成コーヒーのウイスキーのような風味を支えている。

 

<グリーンコーヒー豆のフェニル酢酸は、熟成とともに著しく増加する>

・フェニル酢酸エチルは成熟過程で著しく増加した。

・樽熟成により、通常の保管コーヒーでは検出されなかった香りが検出された。

 

?フェニル酢酸エチルとは?

蜂蜜を思わせる強い甘い香りがする芳香成分です。

食品や香水に使われることがあります。

 

〈樽熟成後のコーヒー品種間の焙煎香の違い〉

・フルーティーな香りのピーク面積値は、イエローブルボン種と他の品種の間で大きな違いを示した。

・ラウリン酸エチルはゲイシャのみ検出された。

・ゲイシャはフェニル酢酸エチルの濃度が著しく低かった。

・焙煎後の香りの特徴は品種によって異なった。

 

?ラウリン酸エチルとは?

石鹸やクレヨンのような香りがする芳香成分です。

ナッツやチーズのような食品に香りづけとして使われることがあります。

 

〈品種によるコーヒー豆の形状と細胞の大きさの違い〉

・豆の大きさ:ゲイシャ≒ブルボン>イエローブルボン

・細胞の大きさ:ゲイシャ<ブルボン≒イエローブルボン

・加熱40秒時の温度変化割合:ゲイシャ<ブルボン<イエローブルボン

・140℃~200℃までに必要な焙煎時間:ゲイシャ<ブルボン<イエローブルボン

【全体のまとめと感想】

ここまで読んだ方の中でコーヒーに化合物?と疑問に感じた方もいらっしゃると思います。

実は、コーヒーの生豆には約200種類の香気成分が含まれております。そして、焙煎をすることで成分が化合、分解し約650種類の香気成分ができますので、コーヒーの香りを決める成分が合計約850種類あることが確認されています。ただ焦がして苦くしているのではなく、化学変化を起こしているのですね!

また、同じ生豆、同じ色(焙煎具合)でも味が異なる場合があります。一気に火を入れて焼き上げるのと、ゆっくり火を入れて焼き上げるのでは、見た目が同じでも化学変化の過程が変わっていきます。普段の料理のように、火の入れ方によって味が変わるのと同じですね!

今回の研究によって、バリスタの感覚と経験で行ってきたことが可視化されたのは、弊社としても大きな一歩であり、またさらにおいしいコーヒーを作る一助となったのではないかと思います。

お客様にさらにおいしく新しいコーヒーを提供できるようこれからも精進して参りますので、どうぞこれからも萬國珈琲のバレルエイジドコーヒーをよろしくお願いいたします!

 

今回はバレルエイジドコーヒーNo.6で使用した樽で研究しました。

3種類ありましたが、パナマゲイシャ、コロンビアが売り切れ、残すはコスタリカのみとなりました。

最後のNo.6の詳細はこちらからどうぞ!

 

【バレルエイジドコーヒーNo.6 - Vol.3 コスタリカ ラ・カンデリージャ -】

萬國珈琲バレルエイジドコーヒーNo.6コスタリカ

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